電力技術理論徒然草 No.11 (長谷良秀) 
     
 
対称座標法(Symmetrical Components:012 法):その5

  前回No.10 では対称座標法の基本的考え方と、1線地絡の場合について事故点fにおける電圧&電流 の012 領域解とabc 領域解の求め方について説明しました。今度は別の故障モードでもう少し計算の練 習をしましょう。
11.1 bc相2線短絡の計算
  三相回路ある点fでbc 相2 線短絡が生じたとしてそf 点ので電圧電流の計算をします。なお事故前の f 点運転電圧はEa,Eb(=a2Ea),Ec(=aEa) とします。 対称座標法ではすべての変数は複素表現である ことを忘れないでください。

  式②はa2+a+1=0 の関係を使えば式②は 2fI0-fI1-fI2=0 となるのでさらに①を使えば fI0=0, fI1+fI2=0となります。 また③は (a2-a)(fV1-fV2)=0fV1=fV2 となります。従って式(11.2)は次式のように整頓できます。


境界条件の式(11.1)を012 領域に変換したら式(11.3)を得ました。これが、012 領域における境界条件 です。 この条件通りの結線をすればFig.11.1(b)の等価回路を得ます。 これが012 領域での等価回路 です。 正相回路に逆相回路を繋ぐだけの等価回路ですが、その接続⽅法は「頭と頭、尾と尾をつなぐ」 ことが⼤切です。(逆につなぐとfV1=-fV2の関係になってしまいます。)。 なお、零相回路には内部電 源は無く、かつ端⼦が開放なので結果としてfV0ということに留意してください。
さて012 領域等価回路図Fig.11.1(b)が求められたのでこの図にTheveninʻLaw を使ってf 点電流電圧に ついて下記の式をえます。


事故点の故障電流が012 領域で(既知の系統インピーダンスと事故点の事故前電圧だけで表現されて)求 められました。残る仕事はこの逆変換だけです。


事故点の電圧・電流が全て求められました。
ところで送電線に発電機等も含めて抵抗分を無視して系統全体として概ねfZ1fZ2≅jωL1としましょ う。この場合式(11.5b)より fVb=fVc=-0.5fEa となるので、事故時の fVb, fVc は概ねfEa の半分 の電圧で逆位相になることが分かります。 また式(11.5a)よりfIbfEa とほぼ同位相、fIc は逆位 相になることも明らかです。


11.2 bc相2線短絡時、電圧・電流ベクトルの可視化
  さて次に、事故点f におけるbc相2 線短絡が⽣じた場合の電圧・電流ベクトルの図式的な可視化を試 みます。 簡単のため発電所から変圧器を介して1 回線送電線がつながる系統の先のある地点fで短絡 が⽣じた場合を想定します。 Fig.11.2(a)の等価回路図では発電機背後電圧端⼦(p)、事故点fとしてそ の間の全インピーダンスがz1=jx1(抵抗rは無視)としています。また、任意の中間点 mを想定し、そ の位置はf 点からp点までの全リアクタンスx1 をk1:(1- k1 )で案分した地点としています。Fig.11.2(a)の 逆相回路部を折り紙のようにおり戻すとFig11.2(b)となります。 この図(b)は電源電圧E との対⽐で三 つの地点p,m,f における正相電圧・逆相電圧の絶対値としての⼤きさと位相関係(電源電圧Eと同位相) を正しく反映しています。 そこでFig.(c)のように対称座標法の定義に従ってf 点、あるいはm 点の Va, Vb, Vc を合成することができます。 結果としてFig.11.2(c)のように各地点の電圧を可視化するこ とができます。 なお、送電線は(抵抗分を無視して)リアクタンス分のみとしているので正相電流 fI1(=-fI2 の位相は(a相の背後電圧Eより略 90 度遅れ位相となります。 そして式(11.5)ですで に⽰したようにfIb はE にたいして略90 度遅れ位相、fIcfIb の逆位相ということになります。なお このモデルでは送電線1 回線のみとしているので各地点の電流は同じです。
    注)そのほかの故障モードでもこのような図式可視化が可能です。
      詳しくは拙著(丸善版またはWiley 版を参照ください )
技術者は電圧・電流現象を⽅程式として理解できることが⼤切ですが、さらにこのように電圧・電流の実 際の姿をイメージできることが現象を理解するという意味で⾮常に⼤切です。


2020年11月12日 長谷良秀
 
     
 
 
 
© 2020 Eltechs & Consulting Co., Ltd. All rights reserved