Per Unit 法と変圧器の等価回路式:その2(三相回路のPU 法)
Corona 再爆発により年末に発せられた再度の緊急事態宣言のこと、関東・中部・関西方面は3
月上旬まで延長ということになりました。技術の世界もRemote work が当たり前の風景になって
きましたね。Corona がもたらした社会的インパクトは様々ありますが、“Remote”とか“Virtual”と
いう新社会現象は“Digital”という波に乗ってCorona 収束以降の未来をも変えてしまう予感があ
りますね。そうすると、Remote とVirtual でカバーできない物造りの現場、すなわち“Craft”とか
“Real”という分野はどのように変化していくのでしょう。気になるところです。ひと昔前の時代に
は“White color & Blue color”という属分類が良く使われたように思います。新時代の“Remote” は
在宅でワイシャツなど着る必要がないので“No color” という新属が誕生するということですかね。
さて本番を始めます。
No.13 では単相回路のPU 法(%表示法)と単相3 巻線変圧器の回路式と等価回路について
解説しました。いよいよ本丸攻めともいえる三相回路の勉強をします。今回は三相回路のPU 法です。
14.1 三相回路のPer Unit 法の基本ルール
単相PU 法では「base 量を定めてその何倍」と考えるのでした。 三相回路の場合も同様です
が、次のような点を基本的なルールとして留意する必要があります。
A) 容量base と電圧base をはじめに設定し、電流base とインピ-ダンスbase は従属的に決める。
B) 単相容量base量
VA1φbaseと3相容量base量
VA3φbaseを設定し、単相容量と三相容量を区別して使い分ける。
C) 線間電圧base量
Vl-lbaseと相対地電圧base量
Vl-gbaseを設定し、線間電圧と相対地電圧を区別して使い分ける。
D) 3相システムの計算に使うインピーダンスマップ表では容量baseは全システム共通の一つの値(例えば1000MVA とか10MVA)を設定する。 電圧base は通常は電圧の異なる各区間ごとにそれぞれの公称の運転電圧値をbase 量とする。
さて、A)の考え方は単相PU 法の場合と同じですね。 B)ですが、三相回路では現実に三相容量
と単相容量という2 つの概念があるのですからbase 量もそれぞれに設定する必要があるわけで
す。 電圧についても線間電圧と相対地電圧の両者を考えねばならないのでC)も当然ですね。D)
についても一つのシステムを定量的に扱う場合、そのbase を全体で統一する必要があるわけで当
然ですが、これはおいおいより実践的な説明で示していきたいと思います。
さて、具体的にPU 法を説明します。
14.2 三相回路のPU法のbase量の決定法
まず初めに三相容量base
VA3φbaseと線間電圧base
Vl-lbaseを設定します。 するとbase 量に関して下記の式(14.1a)①②の関係ありとしますので
VA1φbase,
Vl-gbase
も従属的に設定されたことになります。

次に、電流とインピーダンスのbase 量は従属的に下記のように決めます。

各base 量の単位はMKS 有理単位系のVolt、Ampere, Ohm, VoltAmpere 等です。
以上で対象とする系統の或る区間のBase 量は全て決定されたことになります。具体的にやってみましょう。
具体例
今、発電機(定格120MW,36kV)が275kv 系・154kV 系・66kv 系を経て配電線6kV につながる
系統を考えます。 まず容量base と電圧base を決めます。 容量base と言えば通常は三相容量
ベース
VA3φbaseを、電圧base とは通常は線間電圧base
Vl-lbaseを意味します。
Excel 表をご覧ください。
VA3φbaseは自由に決めればよいのですが、発電機が1 機のみのシステムを考えるときはその発電
機の定格容量を
VA3φbaseとすることが多いかもしれません。 様々な容量の発電機が複数ある系統
では10MVA,100MVA,1000MVA などのいずれかを選ぶことが多いでしょう。ここでは
100MVAbase を選ぶことにします。 電圧base は各区間ごとにその定格電圧(or 公称運転電圧)
を選びます。 電流base とインピーダンスbase も従属的に計算で決定されます。たとえばこの
例での発電機区間では、
MVA3φbase=100MVA,
kVl-lbase=36kVですから
Il-gbase=1,604A、ま
たインピーダンスbase は
Zl-gbase=12.96Ωとなります。36kV 区間では1pu の電流とは1,604A
であり、1pu のインピーダンスとは12.96Ωということです。
システムの電気計算を行う場合にはその対象が複数の電気所を含む大きい系統であれ、或る工
場内の動力系統であれ、まずこのbase 表をあらかじめ作っておくことがいかなる場合も肝要です。
14.3 base 変換式
実用単位で表す電気量V[kvolt],I[amp],VA[kvolt/amp],Z[Ω]等を pu で表現した pu 値を
以下では

のように表現することとします。 すると各pu 値は無単位で次のようになります。

そこで容量base や電圧base を変更するとpu 値は当然変化することになります。 或るシステ
ムの電気量を新旧2 種類のpu base 量体系で表現することし、第2 のpu 体系ではダッシュ印´を
付すことにします。 Base 量を変更するだけであり実用単位の電気量そのものは変わらないので
次のような関係が成り立ちます。

各電気量のbase 量を変換したいときにはこの関係式にもどって変換すればいいわけです。

換の変換式として次式が成立することになります。

具体例として前述の表14.1 に含まれる36kV 区間の発電機が{定格容量60MVA, 定格電圧
36kV, リアクタンス1.7 x
d = puの発電機}であるとします。この発電機は容量 base の 1pu,と電
圧base の1pu とはそれぞれ
MVA3φbase=60[MVA],
kVl-lbase=36[kV]を意味します。電
流base とインピーダンスbase は次のようになります。

従ってこの発電機の定格電流はもちろん1pu=962A です。
インピーダンスは x
d=1.7pu=1.7x21.6=36.7[Ω]、すなわち36.7Ωということを意味しています。
次に、この発電機の容量base を先のExcel 表のように100MVAbase に変換することを考えま
す。 この発電機は60MVAbase で表現して1.7pu ですからこれは100MVAbase での値に変換す
るには式(14.5b)を使います。

100MVAbase でシステム計算をする場合にはこの発電機のリアクタンス値は100MVAbase のイ
ンピーダンスマップでは x
d1.7pu=>2.83puに変換して表示されることになります。
今回はここまでとしましょう。 次回はいよいよ三相変圧器の対称座標法による回路式およびその等価回路の解説をします。
2021年2月3日 長谷良秀