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ETAP令和5年ユーザー会に出席して
この徒然草シリーズも44回目となりました。このところひたすら方程式を書き込んで回
を重ねてきましたが、久々に式を含まない草を摘ませていただきます。
去る11月22日、西新橋の航空会館でエルテクス主催のETAPユーザー会に参加させていた
だきました。 コロナで明け暮れた3年間をようやく脱して久々のリアル集会でもあり大
入り満員の盛況で盛り上がった一日を私も体感させていただきました。 懐かしい方々
との久々の対面をさせていただく機会ともなりました。2019年1月のコロナ以来リモート
が世の中の仕組みを変えてしまった感がありますが、やはりFace to faceでの会合はぬく
もりがあって格別ですね。
プレゼン内容も盛り沢山で色々勉強になりました。前回に続き1番手を務めさせていただ
いた私の話はともかくとして、急遽登板されたOTIのフセイン氏のレクも含めて、エルテ
クス片山さんによる定番のETAP新機能の話、三井さん吉田さんのレクのほかに、登壇さ
れた各位のどの話も興味津々で印象深いものがありました。
Schneider JapanのChoiさん榎本さんのアークフラッシュ関連の講義は日本の技術がや
やもするとガラパゴス化している一つの証左として興味深いものがありました。 戦後
このかた、日本は独自の技術を極めてきました。それはそれですばらしいことです。し
かしながらそれがひたすらガラパゴス化して今日に至っていることも事実です。解析技
術の切り口においても然りです。 ガラパゴス化は日本の過去の技術躍進に対する勲章
でもありますが、その一方で、グローバル化が進む今日においては日本が克服しなけれ
ばならない壁になっている現実も否定できません。SchneiderのChoiさんが多くの写真で
示された欧米流のメタクラ・キュービクルのアークフラッシュ対策などはガラパゴスを
今後いかに克服し、脱していくかかという視点に立つとき、大いに参考になる話で
した。私もアークフラッシュ解析は欧米では今やJISマークの様な役割を果たしていること
を説明させていただきました。 アークフラッシュに限らず、ETAPを身近にされている
皆さんはETAPが規格やコードなどに象徴されるように、欧米流の技術標準と完全に連動
してグローバル時代の技術活動の万能ツールになりつつあることを色々体感されていま
すから、私同様にいろいろの感想を抱かれたことと思います。
大和大学田岡先生のお話について。 私は田岡先生と世代がたっぷりかぶっているの
で、Computation技術に関する先生の歴史的な解説はその一つ一つが私にも懐かしく、来
し方を振り返る良い機会となりました。 有名なエニグマに登場するような真空管式の
計算機。磁気ドラムメモリやコアメモリ,そしてIBM360の磁気テープやパンチングカー
ド。 さらにプロコンの登場等々。 そして30年前のパソコンに次ぎWifi・Bluetoothと
モバイルの登場。私も田岡先生と同じ光景を見ながら歳を重ねて来ました。 今、技術
の進歩は益々加速しているようです。 身近な電力動力関係のアプリについても同様で
すね。 私は1975年ごろに「コンピュータによる潮流計算・短絡計算の可能性につい
て」論ずるAIEE(IEEEの前身)の論文を読んだ記憶があります。著者はM.Carterという
当時の有名人でした。 限られた演算速度とメモリー容量の中で、いかに速く収斂解を
導くかということが大きいテーマでした。 ニュートン法・ガウスザイダル法・デカッ
プル法・・・・。 計算能力の劣る時代にあってはこれらの演算技術の開発自体が大テー
マでしたし、ノード数・ブランチ数の吟味がいつも解析の天井枠になっていました。現
在では1万ノードほどの大系統でもメモリー容量を気にすることもなく、ほぼ瞬時に解が
導けること自体が驚きではあります。
田岡先生の話のおしまいの方に登場した並列演算の歴史も興味深いものがありました。
気象解析や海洋潮流解析、またCO2温暖化予想解析等々・・・、は地球規模の大シミュ
レーションがいとも簡単に行われる時代になりました。 並列演算が益々進化して科学
技術の進歩が一層加速することでしょう。 果たしてこれからのシミュレーションで明
らかになる近未来予想の姿は明るいものになるか暗いものになるか? そんなことを空
想できる時代になりました。 今回のユーザ会ではAfter6が無かったのはちょっと残念で
した。田岡先生とはまたどこかで飲み会でもしたいと思っています。
三菱ケミカルエンジニアリングの青木洋一さんのレクはETAPを身近に扱ってこられた皆
さんはきっと「大変身につまされる思い」を抱いて拝聴されたことでしょう。私もその
一人です。 ETAPを使いこなすためには、「対象とする解析目的に必要な技術的な知
見」も大切ですが、「ETAPを使いこなすためには場数を踏む慣れ」が大切なことも事実
です。 青木さんはお話の中で「ETAP を職場の誰もが使いこなす環境を作ることの難
しさ」を力説されて、この問題に会社の垣根を越えて取り組むことの重要性を説かれま
した。 誠にごもっともな話と拝聴しました。 「ETAPに詳しいAさんが職場にいて、
Aさんがいなくなれば誰もが使えなくなる・・」という悩みがどの職場にも大かれ少なか
れ存在することも事実でしょう。 これはOTIやエルテクスを含めてETAPのユーザー
がぜひ協力し合って情報を共有し、克服すべき共通の課題ですね。
青木さんの講演は誠に説得力のあるお話でした。 しかしこの課題を克服するマジッ
ク解や打出の小槌はないでしょう。いろいろの切り口での努力の積み上げなどの合わせ
技しかないでしょう。 エルテクスが行うリモートの使い方講習会もその大切な手段
の一つでしょう。 OTIにもNew-versionで新機能を増やし、選択ボタンを増やすばかりで
なく使いやすさを追求し、またそれをしっかりアピールすることが求められるでしょ
う。 ただ、これらはETAP供給サイドに求められる当然の努力です。 青木さんのご提
案は需要サイドのネットワークを強化することで新たな共有の場を作ることを力説され
たのであると思います。 企業毎の壁や職場環境の違いを乗り越えての新しい場を模索
していくことは工夫次第で可能ではないでしょうか。
今後エルテクスをキーステーションにしてこのような情報交換の場が広がっていくこと
を期待したいものです。 皆さんの生のご意見と積極的な参加意識が重要な鍵になるで
しょう。
以上、徒然れに、久々に方程式のない草摘みをさせていただきました。
令和5年も残りわずかとなりました。 ウクライナやパレスチナガザ地区など悲しい状態
が一日も早く収束することを祈るばかりです。
(2023年11月26日 長谷良秀 記) |
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